相続人は、民法第896条により、亡くなった方(被相続人)の財産に属した一切の権利義務を承継するとされています。したがって、被相続人が所有していた不動産は相続人が承継することとなります。そこで、相続登記が必要になります。
1.相続登記と未成年の相続人
相続登記とは、被相続人が所有していた不動産の名義を、新しい所有者(相続人)の名義に変える手続きです。不動産登記簿の所有権を正式に相続人に移転させ、将来的なトラブルを防ぐために行われるものです。相続登記は、不動産を所有する上での法的な安全性を保証し、相続人の権利を守る重要な手続きとなります。
相続人に未成年者がいる場合、未成年者であっても被相続人の財産に関する権利義務を承継するため、被相続人が不動産を所有していた場合は、未成年者である相続人も相続することになります。未成年者が不動産登記名義人になることは問題ありません。次では、相続人に未成年者がいる場合の手続きについてポイントを解説します。
2.法定相続分による相続登記
各相続人は、法定相続分に応じた相続登記を申請できます。未成年者が相続人の場合、親が法定代理人として登記手続きを進めます。法定相続分による相続登記は、相続人のうち1名からでも申請をすることができますが、他の相続人の相続分も同時に申請する必要があることに注意が必要です。
3.遺言による相続登記
遺言書で不動産を未成年者に相続させる場合、親が法定代理人として手続きを行うことになります。
4.遺産分割協議書に基づく相続登記
相続人が妻と未成年者である子の場合に、遺産分割協議を行って妻が単独で不動産を相続したいという意向があるとします。
未成年者は自分自身のみで遺産分割協議をすることができないため、代理人が必要となります。
しかし、法定代理人である母も父の相続人という地位にあり、このケースにおいて母が子の代理人として遺産分割協議をするという行為は利益相反行為に該当します。
したがって、母に代わって子の代理人となり、遺産分割協議を行う特別代理人の選任を家庭裁判所に申立てなければなりません。家庭裁判所に選任された特別代理人と母が遺産分割協議を行い、遺産分割協議をまとめた後、相続登記を申請します。
なお、未成年者が成人した後に遺産分割協議を行う場合は、特別代理人は必要ありません。
5.最後に
相続登記の申請が義務化されました。令和6年4月1日から、相続や遺贈により不動産を取得した相続人は、その所有権を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
正当な理由がない場合、10万円以下の過料が科されることがあります。不動産を相続したら、お早めに登記の申請をしましょう。
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