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親が認知症になってしまったら、不動産の売却はできない!?

2024.01.15

1.はじめに

親が認知症になってしまったとき、住居を売却することができるでしょうか。
在宅介護が困難で、介護施設に入居することを検討しているのであれば、入居費用が必要になります。
また、毎日の生活費として資金が必要なケースもあるでしょう。
そのような場合、認知症の親の所有する不動産を子が売却したいと思ったとき、どのような方法が考えられるか、概説します。

2.認知症の親が所有する不動産を子が売却できるか

不動産を売却するためには売買契約が必要です。
契約には、当事者の意思能力を必要とするため、不動産を売却するには売主と買主が意思能力を有している必要があります。
意思能力を有する状態とは判断が難しいところですが、売買契約書の内容を理解できないのであれば、意思能力を有するとは言い難いでしょう。
また、必ずしも「認知症になってしまったら意思能力が欠けている」と判断されるわけではありません。
認知症といっても症状や進行のスピードはケースバイケースであり、個人差のあるものですから、認知症の症状が少し見られたとしても意思能力を有し、売却できる可能性もあります。

しかしながら、売買契約書の内容を理解できないような重度の認知症であり、意思能力を有しない場合においては、いくら親子関係であっても親が所有する不動産を子が勝手に売却することはできません。
高齢者の契約行為

3.成年後見制度の利用

上述の通り、不動産の売却が親のためであったとしても、子が売却することは許されません。
将来いつかは発生する相続の後であれば、親が所有していた不動産を相続人である子が相続し、子が売買契約の当事者として売却することは可能です。
しかし、介護施設の入居に要する費用を捻出するためであったり、親の生活維持時に費用が必要なケースでは、売却のタイミングが遅すぎます。
親が亡くなる前に売却したいと考える場合には、成年後見制度の利用を検討することになります。
成年後見制度を利用すると、家庭裁判所によって選任された成年後見人が、本人である親に代わって不動産売却を行います。

4.成年後見制度を利用する場合の注意点

そもそも成年後見制度とは、認知症など判断能力が不十分な人の権利を保護するための支援制度です。
法定後見制度では「後見」「保佐」「補助」と3つに区分されています。

まず、家庭裁判所に成年後見の申立てを行ったとき、一般に長くて3~4か月ほどの期間を要します。
申立てまでの準備も必要になるため、数日で成年後見人が選任されるわけではないことに注意が必要です。
また、不動産の売却が本人(親)のためである必要があります。
例えば、売却して得た代金を本人のために使用することはできますが、子の生活費や孫の教育などに使用することはできません。
さらに、居住用不動産を売却する際には、家庭裁判所の許可が必要となり、後見監督人が選任されているケースでは、後見監督人の同意も必要です。

5.最後に

成年後見人は、不動産を売却したら業務が終わるわけではなく、被後見人が亡くなるか、意思能力を回復するまで財産管理などの業務を行わなければなりません。
ご本人が元気であれば、家族信託の活用も選択肢となり得ます。
お早めに専門家へご相談ください。

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